年が明けた。
1年半ほど海外に滞在しており家から離れていたので、
久しぶりに家族と過ごす正月である。
我が家では、近所の神社と都心部にある大きな神社、
この2ヶ所に参拝するのが毎年の習慣になっている。
今年は、元旦と翌々日の3日に初詣へ出かけた。
元旦の初詣は、大雪の中、雪を漕いでいく羽目になった。
大晦日から元旦にかけ、山ほどの雪が降ったのだ。
車で行こうにも道路の除雪が追いついておらず、
車を出すことができない。
行くのをやめようかと話していたが、
昼を過ぎた頃には空が明るくなり、太陽が顔を出してきたので、
「では運動がてら、歩いて行こうか」という話にまとまった。
夏なら歩いて20分ちょっとの道のりだが、この雪である。
結局、40分強の時間がかかった。
母と妹と私、3人が一列になり、黙々と道を作りながら歩く。
聞こえるのは、自分達の息と、雪を踏む音だけだ。
雪が雑音を吸収し、驚くほど静かである。
私は最後尾を歩く。
たまに前方で、すれ違う人に道をゆずる声を聞いて、
ハッと顔を上げる。
足元をじっと見つめて歩いていると、
周囲の人の気配さえ忘れてしまいそうになる。
神社は、元旦のわりには人がまばらだった。
少しほっとしながら手を合わせ、
お守りを買い、おみくじをひき、今年一年の平安を願った。
その翌々日は、交通機関を乗り継いで、大きな神社に向かった。
こちらは都心部にあり、毎年多くの参拝者が訪れる。
そのため、混雑せぬよう、
隣接する公園を含む広大な敷地にぐるっと輪を描く形で、
境内へのルートが組まれている。
参拝者が数日かけて磨いたであろうツルツルと滑る道に、
転ばないよう手を取りながら歩く。
しばらく歩き、ふと顔を上げると、
すっかり雪の中に埋もれている公園の遊具が目に入った。
雪囲いされた遊具は、白い雪面に鮮やかだ。
周囲の雪面はぽこぽこと波打ち、
それもまた新しい遊具のようである。
前を歩く人々の影は長く伸び、道に縞模様を作っている。
前後から聞こえてくる話し声と、楽しげに揺れる縞模様。
歩きながら、つられて思わず口角が上がる。
楽しい気分だ。
しばらく歩いて高台の境内にたどり着き、無事に参拝を終え、
帰りのルートに向かうと、数軒の屋台が出ていた。
その一軒から家族分の甘酒を求め、
隅の方でしばし休憩する。
寒空の下で飲む甘酒は、なぜこんなに美味しいのだろう。
寒さに縮こまっていた身体が一気にほぐれる。
甘酒にふぅーっと息を吹きかけ、
眼鏡がくもるのさえ楽しい。
甘酒に映る木々の影を覗き込みながら、
あぁ、今年もいい年になるかもな、などと考えていた。
さて、今年初めの行事は、
大雪のおかげで大変ながらも面白く、
印象に残るものとなった。
これからの一年は、一体どんなものになるだろうか。
どうか、明るく朗らかな一年になればと願う。
(撮影地:北海道札幌市)