夕方のニュースに
今までになく早い開花宣言を聞き、驚いた。
そうか、もうそんな季節か。
まだ咲き始めと知りつつも、
急に待ちきれなくなる。
翌日の天気は…なんとか晴れるようだ。
少し遠くの公園に、足をのばしてみることにした。
***
その公園は実に広く、
敷地沿いには、川が流れている。
遠くには、山々の稜線。
空が広い。
雪解けの季節、
川の流れは速い。
うねる水面が、
せわしなく光を跳ね返している。
公園は思いの外、人で賑わっていた。
犬とお散歩する人。
のんびりとベンチで休む人。
遠くからは、子供のはしゃぐ声が届く。
桜は……。
やはり、まだ咲いていないようだ。
しかし、蕾はだいぶ膨らんでいる。
早咲きの木、ないかな。
ぶらぶらと、探しながら歩く。
おっ。
見つけた。
満開に咲き誇っている。
柔らかな桃色。
鮮やかな青空。
嬉しい。
今年の“春”だ。
***
だいぶ歩いただろうか。
公園の奥には、野球グラウンドがあった。
今日はまだ、誰もいない。
静かに日が降り注ぐそこに、
白球を追う残像を重ねる。
河川敷には、自転車。
差し込む西陽。
風が冷たくなってきた。
そろそろ帰ろう。
ふと帰り際、
陽に透ける花びらに
思わず息を呑んだ。
(撮影地:北海道札幌市)