先日小樽を訪れた際、
とても年季の入った、鉄橋に出会った。
てくてく歩いていると、
なにやら遠くに、重厚な影があるのだ。
よく見ると、
レンガ造りの鉄橋だった。
この風貌。
息を呑む迫力。
まるで意思を持って、
語り出しそうな雰囲気がある。
見上げると、
わずかに線路の枕木が見える。
隙間から差し込む光が、
蔦の葉を照らす。
それにしても、
蔦の葉の勢いがすごい。
レンガや鉄を
ほとんど覆い隠してしまっている。
まるで、蔦でできた鉄橋のようだ。
おぉ…。すごい…。
見れば見るほどに、
気持ちが興奮してくる。
奥の方に目を凝らすと、
まるで、大昔の城跡のような重厚感。
廃墟に迷い込んでしまったのかと
錯覚してしまう。
感嘆のため息とともに、
反対側を見遣る、と、
こちらに伸びるのは、
現代的な鉄橋である。
幾重にも交差する線路の影に、
急に、現実が蘇る。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…。
混乱する私をよそに、
電車は、のんびりと通り過ぎていく。
そうだった、鉄橋だった。
頭上の揺れに、
ふと気付かされる。
橋に寄り添う木々の間から、
日がまぶしく降り注ぐ。
ここに蓄積された、途方もない時間。
考えると、眩暈を覚える。
もう一度、見つめる。
鉄橋はただ、
静かに、佇んでいる。
(撮影地:北海道小樽市)